社会福祉法人 愛知玉葉会 第二尾張荘

愛知県名古屋市守山区にある『社会福祉法人 愛知玉葉会 第二尾張荘』のブログ

07
2017-10

水・戸・黄・門

投稿時間 : 14時00分00秒

カテゴリー : ヨンマルパパのサブカル談義

ジャンル : 日記





高齢者施設では鉄板の大人気コンテンツである、あの『水戸黄門』が復活したのを御存じ

だろうか。

といっても、地上波での放送ではなく、BS・TBSでの放送(毎週水曜日19:00~)であり、

視聴環境が無い方には、今のところ見る手段がない。

六代目となる水戸黄門こと徳川光圀が演ずるのは、われわれ世代には金八先生の印象が

あまりに強い武田鉄也。

先代の里見浩太朗や先々台の石坂浩二より、二枚目ではない分、ルックス的にはそれ

らしい(^_^.)。



さて、この水戸黄門=徳川光圀は、寛永5年(1628)、家康の十一男で尾張・紀伊と並ぶ

御三家のひとつ水戸徳川家初代・頼房の三男として水戸城下の家臣宅で生まれた。

長兄は讃岐・高松藩主になった松平頼重であり、次兄は夭逝したことから、三男の彼が

藩主の世子となって、元服の際、時の三代将軍・家光より偏諱を賜り、光国と名乗る。

彼が二代藩主となったのは寛文元年(1661)、34歳のことであり、

「国」の字が今日知られる「圀」と改められたのは、50歳を過ぎてからという。

若いころに司馬遷の『史記』伯夷伝を読んで感銘を受け、安積覚(格さんのモデル)を

総裁に『大日本史』編纂事業に着手、佐々介三郎(助さんのモデル)に命じて全国に史料

蒐集の旅をさせ、楠木正成を顕彰する「楠公碑」を正成が戦死した湊川の地に建立させる

など、明治維新時の政治スローガンである尊王攘夷思想につながる「水戸学」を生む素地

作ったことでも知られる。

元禄3年(1690)幕府より隠居の許可が下り、養嗣子の綱条(つなえだ。兄・頼重の子)に

藩主の座を譲ったが、その際、権中納言に任じられている。この官位の唐名が「黄門」

である。

多くの人がすでに承知されていることとは思うが、彼が全国を漫遊した事実は無い。

水戸藩主は参勤交代が無い「江戸定府」とされており、許しを得たときだけ国許に帰ること

が出来た。水戸藩主時代は3年に一回程度水戸へ帰っていたと思われ、江戸・水戸間

往復の際に様々な経路を辿ったにすぎない。帰国の際には領内を視察して回ったようだが、

隠居になってからでも、足を延ばしたのはせいぜい関東近圏であり、北は祖父家康が眠る

日光東照宮、南は祖母の菩提寺があった鎌倉までであったといわれている。

また、昔から俗に語られる「天下の副将軍」というのは後世の講談における創作に過ぎず、

幕府が定めた正式な役職ではなかった。



ドラマに登場する光圀は、すでに綱条に藩主の座を譲って、水戸領内の西山荘で晴耕雨読の

生活を送る楽隠居の身分。

毎回ひょんなことから、地方の藩における御家騒動に関わり、それを収めるべく旅に出る

のだが、その途上に立ち寄った土地で庶民たちの生活や伝統文化、特産物に触れ、

やがて彼等を苦しめる悪代官・悪徳商人らを懲らしめたのち、葵の紋が入った印籠が登場

してメデタシメデタシというのが人気の鉄板フォーマットなのだが、

これが完全に確立されたのは、戦前はプロレタリア俳優として活動、戦後は俳優座の創設

メンバーであり、映画やテレビではクセのある悪役で知られた東野英治郎が光圀を演じた

TBS「ナショナル劇場」版(1969年~)からである。

もともと、水戸光圀を主人公にした講談「水戸黄門漫遊記」は江戸時代からあり、現在の

ドラマの原型がここで形成されている。これをもとにした講談や歌舞伎が幕末・明治期に

人気を博し、映画では無声時代からさかんに題材として取り上げられ、トーキー、戦後の

カラー映画、テレビドラマ、はたまたテレビアニメ様々な作品が製作されてきた息の長い

人気コンテンツで、東野版以前にも、映画でたびたび光圀演じた月形龍之介主演のモノクロ

テレビシリーズが同じTBS「ブラザー劇場」(1964~1965)として放送されている。

誰もが知るTBS月曜20:00からのナショナル劇場版『水戸黄門』は、かの経営の神様、

松下幸之助が「世のため人のためになるような番組を提供せよ」と部下に命令したことから

誕生したというのも有名な逸話である。

また、当初は森繁久爾に光圀役が決まりかかったが、彼の古巣だった東宝から横槍が

入って頓挫し、代わりに俳優座の東野に白羽の矢が立ったのだという(ついでながら、

森繁は、のちにNHK大河ドラマ『元禄太平記』で光圀を演じている)。



それにしても、これほどまで黄門物が長い人気を得たのは、なぜなのか。

忘れもしない小学6年生の夏休み、体調を崩して入院した際に買ってもらい、

ベット上で読んでいた『歴史への招待⑮』(昭和56年 日本放送協会出版)を書棚から

引っ張り出して読み直してみたところ、もしろい記述があった。







この本は、当時NHKで放送されて人気だった同名の歴史番組を出版化したものだが、

巻頭に収録されている光圀を題材にした放送回「水戸黄門漫遊せず」に出演していた

作家の井上ひさし(今は故人)が、水戸黄門漫遊記が幕末期に流行した陰に、

第九代水戸藩主・徳川斉昭の関与を示唆しているのである。

簡単に説明すると、水戸徳川家は、尾張・紀伊と異なり、将軍を出す資格がないもの

とされており、斉昭としては水戸の血を引く人間を何としても将軍にしたかった。

その候補者となったのが、ここ数回にわたり話題にしてきた彼の七男・一橋慶喜であり、

斉昭が江戸の人気講釈師に金を払って、弘法大師空海が全国行脚したという伝説と同様、

「前の副将軍」水戸光圀が全国を漫遊して世直しを行ったという伝説を世間に広めさせる

ことで、「水戸出身の将軍」待望論という世論形成をしたかったのではないか、

と推測されているのである。

なるほど、確かにそれはありうる話だ。

その結果、慶喜は一旦は紀州派が推す徳川家茂に敗れたが、最終的には水戸系初の

将軍となっている。もっとも、そんな彼が最後の将軍になったことは、歴史の皮肉といって

いいだろう・・・

それはともかく、里見版で事実上終了したと思っていたこの番組がBS枠とはいえ、こうして

復活したことは、時代劇ファンとしては実に喜ばしいことだ。

劇伴音楽、主題歌も、これまでのシリーズと同様、馴染み深い木下忠治の名スコアが

使われている。

そして今回の「武田」黄門の記念すべき第1シリーズが今の時代において何よりも決定的に

正しいと思えるのは、彼らが青森・八戸をめざして、みちのくを旅するところである。

第一話は現在の福島県いわき市が舞台であり、今後福島県を縦断していく。

いまだ「東日本大震災」の傷が癒えていない福島・宮城・岩手を黄門一行が悪を蹴散らして

進んでいくのである。

そこには、この番組で被災地を勇気づけたいという製作者たちの揺るぎない気持ちが見える。

先に述べた「武田」黄門は決して二枚目ではなく、声が大きく、下世話感が漂い、コミカルな

芝居が似合う「昭和の黄門様」の香りがそれとなくある。

三代目となる風車の弥七役の津田寛治も、あまりに当たり役だった初代・中谷一郎、

手堅い演技を見せた二代目・内藤剛志と比較すればまだ板についていないが、けっして

悪くない。

惜しむらくは、若い助さん・格さんだろうか。

先日、仲代達矢のインタビュー本を紹介した時代劇研究家の春日太一は著書の中で、

「本番組の配役で重要なのは光圀ではなく、助さん格さんコンビであり、老人である光圀は

孫の様に若い二人の引き立て役であるべき」という意味のことを書いていたと記憶するが、

そう考えると、二枚目ではないものの主役級である「武田」黄門存在感と比べ、

世間的にはほとんど無名な二人の配役はどうしても見劣りがしてしまう。

それは、最初の東野版の助さんが、放送開始当時、時代劇俳優として若くて華があった

であろう杉良太郎(初代)や里見浩太朗(二代目。実は月形版の映画で格さんを演じている)

だったことを考えれば、よく理解してもらえるのではないか。

今の時代、本来なら、スーパー戦隊・仮面ライダーで主役を務めた松坂桃李・竹内涼真クラス

起用してほしかったところだが・・・。

アレコレ書いてしまったが、全10話で放送されるという今回のシリーズ、何とか次の流れに

つながって欲しいなあと思う。

いうまでもなく、地上波での放送である。

NHKBSプレミアムが不定期放送している『大岡越前』も含め、今時代劇の多くがBSで放送

されているが、やはり、できるだけ多くの人々に見てもらえるよう、やはり地上波での放送は

欠かせない。

何よりも、メイン視聴層である高齢者世帯では、BSの視聴環境が整っていない可能性が

大きいからだ。

そんなわけで、私は今回の新たな『水戸黄門』を積極的に応援する。

みなさんもぜひ、ご覧いただきたい。

できれば、視聴可能であるなら、それぞれの事業所で、利用者の方々と御一緒に新しい

黄門様の活躍に声援を送っていただきたいものである。



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