公益財団法人 住吉偕成会 住吉病院

甲府市の『公益財団法人 住吉偕成会 住吉病院 』の”エンパワメント”ブログ

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2018-03

オピオイド緊急事態宣言@USA

投稿時間 : 07時33分39秒

カテゴリー : メンタルヘルス

ジャンル : 指定なし

https://www.cnn.co.jp/usa/35109487.html
CNNによれば、2017年10月26日、アメリカのトランプ大統領は処方鎮痛薬オピオイドの流行を国民の健康の緊急事態と宣言し、ホワイトハウスのイースト・ルームの聴衆に、「オピオイドの流行を終わらせる世代になる」と語りました。大統領は演説の中で、オピオイドの蔓延について「公衆衛生上の国家的な非常事態だ」と言及。「今起こっているような事態は誰も見たことがない」と指摘し「アメリカ人として、これを続けることは許されない。」と述べました。

米国疾病管理予防センターUS Centers for Disease Control and Prevention(CDC)は処方オピオイド乱用が流行レベルに達したことを明らかにし、2016年の平均余命が78.6年に減少したことを報告しました。これは統計的に有意な減少であり、オピオイド関連の過量投与による死亡率の平均20%増加と一致しているという指摘もあります。アメリカでは1999年以降、オピオイドの過剰摂取による死者数が4倍、1日当たり40人以上までに増加しており、2000年から2015年にかけては、50万人以上が薬物の過剰摂取で死亡したともされています。これはオピオイドの問題に対する過小評価が原因と考えられるものの、外来での慢性疼痛を治療するためのオピオイド処方および転用によっても起こっており、外来患者への過剰処方がこれらを生じさせやすくしていると指摘する論文もあります。

参考:
Ballantyne JC:Opioids for the Treatment of Chronic Pain: Mistakes Made, Lessons Learned, and Future Directions.Anesth Analg. 2017 Nov;125(5):1769-1778.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29049121

2016年3月に、CDCは慢性疼痛治療を目的とするオピオイド系鎮痛薬の処方について新しいガイドラインを発表しています。アメリカでは慢性疼痛の治療では、オピオイド系鎮痛薬の処方量の半量は、プライマリケア担当医によって処方されているため、新ガイドラインは、慢性疼痛の治療において、オピオイド系鎮痛薬を使うべきか、また使うのであれば、適切な開始時期はいつか、といったことへのプライマリケア担当医に向けて作成されています。
このガイドラインには、具体的な薬剤選択肢、使用量、使用期間、そして治療効果やオピオイド系鎮痛薬の使用中止の評価法などについても記載されました。ただし、本ガイドラインからは積極的な癌治療や緩和ケアや終末期介護を受けている患者さんは対象者からははずされています。

新ガイドラインでは12件の推奨項目が示されていますが、特に以下のつの3点が原則とされたそうです。
・積極的な癌治療、緩和ケアや終末期介護を除く慢性疼痛の治療では、非オピオイド系鎮痛薬
 を使った治療が望ましい。
・オピオイド系鎮痛薬の使用では、オピオイド依存症や過剰摂取の危険を減らすため、最小
 有効量を処方する。
・医療提供者は、常にオピオイド系鎮痛薬の処方を注意深く実施し、処方したすべての患者を
 密接に監視する。


CDCの発表:
http://www.cdc.gov/media/releases/2016/p0315-prescribing-opioids-guidelines.html

CDC新ガイドライン:
http://www.cdc.gov/mmwr/volumes/65/rr/rr6501e1.htm


わが国においては、まだアメリカのような国家的な問題とはなっていませんが、オピオイド鎮痛薬の使用拡大に関しては、かつてのベンゾジアゼピンやSSRIのときのような適応拡大に対する懸念の声もあるようです。わが国のガイドラインはまたの機会に触れることにします。


最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。