社会福祉法人 幡多福祉会 幡多希望の家 (旧重症心身障害児(者)施設) 

高知県宿毛市にある『社会福祉法人 幡多福祉会 幡多希望の家 (旧重症心身障害児(者)施設) 』のブログ

投稿時間 : 22時40分51秒

カテゴリー : 施設長の思うまま記

ジャンル : 医療コラム

2019/4/29

施設長 山本洋

今日は4月29日、平成も残すところ後26時間を切りました。27日にやっと点滴が抜けて少し活動が出来るようになりました。希望の家の病棟で点滴台に輸液バッグをぶら下げながら徘徊する施設長の姿に職員も慣れてきたようでしたが、さすがにこのままではまずいと思っていましたが、やっと点滴チューブから開放されました。

今回の検査でまた少し生き延びられたと実感していますが、調子が悪くなっていたときに、タイミングよく、国立がん研究センターの研究班が最新のデータに基づく生存率調査の結果を発表し、それが新聞に大きく掲載されました。

「全がん症例の10年生存率は56.3%、5年生存率は67.9%だった。」凄い良い値

です。

5年生存率で言えば、発生部位別で診ると、もっとも高いのが前立腺(100%)、次いで乳房(93.9%)、甲状腺(92.8%)、子宮体(85.7%)などと続き、胆嚢胆道(28.0%)、なんと我が膵臓は(9.2%)、10年生存率はと言うと(5.4%)。うーんと唸ってしまう数字である。

もちろん診断時の病期別に診ないと、個々の患者さんの予測も5年生存率の実測値もまったく違うものに成るのは事実ではあるが、この値はやはり、膵臓癌で闘病中の患者にとっては恐怖以外の何者でもない。我々膵臓癌患者にはやはり本音で言えば聞きたくないバッドニュースだと思う。

まあしかしこれはあくまでも統計上の話し、個々の患者さんの経過とは次元が違う。

我々闘病者は、素直に癌細胞と上手く付き合う方法を選択して、少しでも生きられる時間を前向きに過ごすことが出来るように工夫していくことが大事かと思う。

「癌と闘うな」と声高に主張する医師もいる、それが正しいのかどうか今の私には明確に反論できる答えは持っていない。しかし30数年の医師のキャリアの間に、一般内科医である私が投与した抗癌剤がこんなに効果があるのかと目を見張った患者がいたのも事実である。

腹壁に大きな腫瘤ができ、検査の結果、胆道癌の多発肝転移、肋骨転移、癌性胸膜炎で多量の胸水貯留、酸素吸入が必要なの状況、しかも腫瘍の圧迫で腎機能が悪化していた患者さんが当時勤めていた兵庫県内の市民病院に入院してきた。悪性度は高い、抗がん剤の効果はほとんど期待できないと思われたが、私は内服の抗がん剤を投与した。効果がなければ予後は週単位の状況だと思われた。内服の抗癌剤が効果があると大きな期待をしていたわけではない。全身状態を考慮するとこの治療がせいぜいと思っていた。進行の速度を考えれば1週間がせいぜいかと、予想していたのに、内服が始まって3日目には右の肋骨弓下に盛り上がっていた腫瘤が明らかに小さくなっていった。それに伴い、右の胸腔にあった胸水が見事に消失して行った。あれよあれよと言う間に腹壁の腫瘍は消失し、予後が1~2週間かと思われた患者が3週間ほど後には、元気に退院して行ったのである。もちろんそのまま投薬は継続したのであるが、再発もまた早かった。残念ながら、結局3月の末には胆道癌の全身転移で亡くなられた。主治医としても天国とまた地獄も見せ付けられた思いであった。

こんな患者さんも居た。四万十町の診療所の患者さん。乳癌で手術を受けた。その術後経過を私が診ていたところ、乳癌の手術の同側肺に腫瘍が見つかった。乳癌の再発かと思われたが、そうではなく、原発性の肺癌と診断され手術を受けた。その経過を診ていたところ、3年程して胸水が出現した。手術を受けた病院に紹介して精査をしたところ、肺癌の再発による癌性胸膜炎と診断された。年齢を考えれば抗がん剤治療等の積極的治療は望めないとの返事が来た。しかし私は手術時の癌組織の病理検査で、新しい抗がん剤(イレッサ)が効果があると予想される遺伝子変異があったことを記憶していた。そのことを主治医に連絡したところやはり間違いはなかった。ただそれ以前その抗がん剤の投与で間質性肺炎が発症してそれが原因で多数の死者がでていた。その為、イレッサの投与は効果が期待できる遺伝子変異がある患者にのみ投与するようになっていた。はじめてその薬を投与する時には慎重を期して、手術を受けた医療機関で2週間入院の上投与された。大きな副作用もなく投与でき来たので、それ以後は私が診療所で投薬していった。またそれが見事に効果があった。胸水は消失、呼吸困難の症状は無くなった。その後数年の寿命が得られて、農作業も出来、更に病弱であったご主人をきちっと看取ることが出来て、本人やご家族に感謝されたのである。

こんな経験から、抗癌剤は確かに効果のある症例がある。しかし人によっては、激烈な副作用が出る事があり、よほど慎重に対象患者さんを選んで治療しないと返って全身状態を悪くしてしまうことになる。そうなれば患者さんだけでは無く、医者も傷つく。自分が処方した薬で患者さんの状態が悪化すれば、医師の仕事を続けることが、たまらなく嫌になる。そのストレスは甚大である。逃げ出したいがそれも出来ない。嫌な仕事についてしまったと後悔このうえない。しかしまた目の前に別の新しい患者さんが椅子に座って待っている。前に進むしかない。研鑽を積んでいくしかない。あーあである。

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