社会福祉法人 幡多福祉会 幡多希望の家 (旧重症心身障害児(者)施設) 

高知県宿毛市にある『社会福祉法人 幡多福祉会 幡多希望の家 (旧重症心身障害児(者)施設) 』のブログ

投稿時間 : 06時33分10秒

カテゴリー : 施設長の思うまま記

ジャンル : 医療コラム


施設長 山本洋

昨日夜、夕食後に疲れからかラグビーの決勝も見ずに寝てしまい、夜中に目が覚めてお茶を飲んだ。女房がまだ起きていて、私の退院後の行動に関していろいろ抗議をしてきた。それを聞いていると何か変?。今回手術の前に一緒に主治医から聞いた話が全く違う。何だこれは?嫁さんは何故か胃癌の再発?と聞いたようで話が違う。主治医は腫瘍マーカーから考えると、今回の画像検査での腫瘍の指摘は膵臓癌の再発と考えられる。抗がん剤治療を進めていくが、2年は難しいと説明があったが、女房は聞いていないと言う。そんなはずはない。主治医の前に一緒に座って説明を聞いたはず。私は愕然とした。聞いていないのではなくて、耳からの情報が理解できていない,理解出来ていないのではなくて、理解しようにも大脳がおそらく拒否してしまうのかと思う。相手は膵臓癌だ、抗がん剤がそれほど効果が期待できるわけではないというが、女房殿には理解が難しいようだ。仮にも県立中央病院で看護師をしていた専門職である。その人がこの体たらくである。いかに病気につての病状説明が難しいかと実感する。主治医は同じ医療者である私に対等の立場で説明をしたのであるが女房にはそれが理解できなかったのかとも思う。それにしてもである、おそらく私に残された時間は普通に考えれば一年、抗がん剤の効果が無ければ、その時間はもっと短くなるだろうと思う。それをはっきりと自覚しなければいけない、そのつもりでこれからの生活を考えていかなければいけないと話す。

岡山に80台後半になる母親が一人でいる。母親に現在の病状の説明をしておかないといけないと思う。来週に岡山に帰って話そうかと思っていたが、女房は強くダメ出しをする。確かに今私の病状を聞くと母親はがっくり来てしまう可能性が高い。止めるかと思うが、月に一度ぐらいは顔を見に帰るつもりでいたのでそれをどうするか。田舎の家をどうたたむかは大きな問題である。難しい問題ではあるが対処していくしかない。

自分の仕事に関してではあるが、医学に関して素人の患者さん家族に説明をすることがいかに難しいかを痛感している。今年の7月筒井病院で診療していると91歳の高齢者が、私の外来に現れた。その人は5月に貧血を指摘されて筒井病院の他の医師からけんみん病院を紹介された。そこで胃内視鏡検査を受けて、胃がんが見つかった。けんみん病院の医師は、手術を勧めたが患者は高齢であることを理由に手術をしないと決めた。主治医はCT検査の結果から予想したのか?、手術をしないと予後は2か月と説明した。うっそでしょう!。患者家族はその説明を受けて筒井病院に紹介状の返事を持って帰ってきた。その後何度か通院しているときに、たまたま私の外来に受診したのである。それまでも筒井病院に受診していたが、その時の医師は、がん患者の終末期を診た経験があまりなく、予後は2か月と紹介状の返事にあって、不安で仕方がなかったようである。すぐにけんみん病院への入院予約を取るように指示したようである。私はすぐに腹部CT検査をしてみた。腹水等はなく、特に癌性腹膜炎を疑う所見はないと判断した。患者さんと奥さんにけんみん病院の先生の話は勇み足と思うと、私は即座に否定した。

「そんな馬鹿な話は無い」と、まだまだ時間はあります。手術はしなくてもまだできることはたくさんあります。来年の正月は自宅で迎えることはできますよと説明した。患者家族は手術をしないと決めたら、医療側から見捨てられたと感じていたようだ。何と情けない話だろうと思う。癌と診断されてからすぐに緩和医療が始まると言うのは、常識になっていると思っていたが、残念ながらそうではないようだ。痛みをとることだけが緩和医療ではない。診断を受けた患者、家族に対してしっかりと向き合って、手術をしないならば、今後どのような治療方法を考えていくかを話し合って決めていかなければいけない。手術をしなければけんみん病院では今後の診療はない、紹介先の病院へ紹介状の返事1枚で突っ返してしまう。全く考えられない所業だと思う。

その患者は10月に一度輸血を受けたが、今のところは比較的元気で、一昨日希望の家で診察をした。輸血と少量のステロイドが効果があったようだ。前日カラオケに行って3曲歌ってきましたと報告があった。これからはどちらが長生きができるか競争ですねと笑って別れたところである。今後も私が診させてもらえるわけではないから、後方病院を確保してできるだけ自宅で生活できるように支援をしていきたいと思っている。いったいどうなっているんだろうと思う。こんな中で自分の最期を何にもわかっていない医師にゆだねる気持ちにはなれない。情けない話である。

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